わたしはいわゆる「入院」というものを経験したことが無い。
もう少し元気なら相部屋とか個室とかウキウキ☆入院生活を想像してテンションも上がるってなもんですが(ていうかそもそも元気な人は入院しない)当然そんな余裕はなく、次々と押し寄せる痛みの波に瀕死の形相で耐えながら中腰でヨロヨロと入院。
ひとまず先ほどのNSTで陣痛の波を計測しながら5分おきに血圧を計られること1時間。これがベッドの上で様々な計測器を体につけて行うんだけどじっとしているのがめちゃめちゃ辛い!痛みが来るたびにベッドの上で鮮魚よろしくのたうちまわりたくなるのですが、計測器が外れるために動けない。
助産婦さんもいなくなっちゃうし母(寝ぼけまなこ)と2人っきりで「まだかな~?」と言ってるこの時間が、先が見えないだけに1番不安だった。時計の針ののろさがこれほど恨めしい事はなかった。
深夜2時過ぎ、陣痛室へ移動。
間接照明で薄暗く、アルファ波のでるCDなんかもズラリ揃っていて各種、クッションもご用意してます。みたいななんだか「癒しの空間」といった風情。トイレ付きの個室でベッドも布団もある。
けれどCDなんてかける余裕はナシ。自分で調合したアロマオイルも持ってきてたけど鼻ざわりでまったく使う気にならず。
友人たちから応援のメールがはいる。激痛の合間に時間をかけてやっと「じんつうってこんなにいたいのね」と返信。漢字変換できない余裕の無さとそれでもメールは返す自分の現代っ子な一面をこんな時に再発見☆ってそんな事は心からどうでもよい。
痛みの波はもはや2、3分間隔になっていた。体力がだんだん落ちてきて痛みがおさまるほーんの一瞬、フーーー・・・とオチかけた瞬間尖った槍で様々な方向から下腹をひと突きグサリと刺される、の繰り返し。
あーゴルゴダの丘のキリストもきっとこんな感じで・・・と朦朧とする頭であってるのか間違ってるのか何故かキリストと自分を並べたりする。
そんな時、母は・・・?
というとオヤオヤびっくり、苦悶のわたしの隣でぐっすりおやすみだ。
痛みマックスの時に「いたああぁぁぁぁぁいいいいUREEYYYYYY!!」とJOJO叫ばずにおれない、わたしの声でびくっと目覚め薄目を開け「・・産みの苦しみよねぇ~」と低い声でムニャムニャ言ったりする。
わたしの御母堂はネバーエンディングストーリーに出てきた巨大亀のモーラか!と思った。もしくはなんか、色々超越した存在なのか!まぁその時のわたしは「痛み」という最もエッジな感覚に支配されて言葉の意味さえ理解することもままならず「産みの苦しみ」も「南のお告げ所ウユララに行き尋ねてみろ」も結局同じようにしか響かなかったわけだけど。