母とフジコ・ヘミングを聴きにシンフォニーホールへ行く。
ちょっと遅くなった母の日のプレゼントなのです。
スペインのカメラータ21オーケストラも良かったけれど(ラテン系の美男美女揃い。銀色の髪をお尻までのばした美しい牝馬のような女性に釘付け)しかし何より初めてみた生・フジコは予想以上にものすごかった。
カメラータの演奏が厳かに終わった後、彼女がステージ袖からもそりもそりとゆっくりステージに現れた時、思わず鳥肌がたった。
「あ、この感じ、誰かに似ている・・・」
そう。わたしが思い出したのはあろうことか米良美一だった。
彼をステージではじめて観た時の、見てはいけないものを見てしまった「うわわわ!マジか!」というような粟立った気持ち。
そこに立っているだけでこちらの感情をぐらぐらと動かしてしまう切実さ。
圧倒的な存在感とジブリアニメに出てくる魔法使いのおばあさんのような非現実感が混じり合って混沌としている。
そしてソロ演奏が始まると、その場の空気はもっとえらいことになった。
彼女の「ラ・カンパネラ」はもはや説明不要、というくらい有名だけど鍵盤をたたく度にまあるい光りの粒がコロコロと転がり出すのが本当に見えるくらい神々しくて、でも優しい。
大胆さと心の機微が繊細な糸のように絡み合うエモーショナルな演奏。
こんなのは初めてだった。
ここまで独創的だと賛否両論かもしれないが、わたしはすきだなーと思った。彼女の別れの曲、生で聴いてみたいなあ。
母子共にすっかり魅せられ、やられてしまった。
家に帰るとレンの面倒を一日みてくれた父が別の意味でやられてしまっていた。感謝!