妊娠・出産・育児日記

なかがわりえこさんのお話

2010年7月4日:代表ブログ(2007年10月〜2010年10月)掲載からの転用

代表 平野聡子 / satoko hirano

初の妊娠、出産、育児。約4年間の記録。

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近所の幼稚園で「ぐりとぐら」の作者である中川季枝子さんの講演会がある、と友達に聞いて出かけた。75歳になる先生は背筋のシャンと伸びた、白髪のきれいな素敵な方だった。

まだレンが生まれて間もないころ、はじめてプレゼントで頂いた絵本が「ぐりとぐら」だった。不朽の名作だ!さあ読むわよ~と、意気込んでページを開いたとたん当初、絵本をまったく理解してなかったレン氏によって、みんなでカステラを食べる著名なシーンにさっそくペン入れ=落書きされ(トンカツ先生ごめんなさいよ)0歳から絵本を…と鼻息荒く意気込んでいた親心は数秒で消沈。ちーん。

 

が、最近になって絵本をめきめき好きになり、ぐりとぐらもお気に入りの1冊となった今はおのれが派手に落書きしたシーンを指さして「へんね」「いっぱいね」などと言っている。
その変ないっぱいの落書きはアンタのしわざだよ…と心で毒づく日々である。
まぁそれはともかく、文中にでてくる「ぐりとぐらの歌」をご存知だろうか。

 

ぼくらのなまえは ぐりとぐら
このよでいちばんすきなのは
おりょうりすること たべること
ぐり ぐら ぐり ぐら

 

前々から、これはどんな節で歌えばいいんでしょうね?
というのがギモンだった。
うちではレンと交互に適当に歌ったり(レンは「ぐら」と言うだけ)気分によってラップ調で歌ったりしてるんだけど、本当のところはどうなんだろう?
その謎が解けたので、長くなるけど講演中わたしがぐっときたポイント備忘録と共にメモっておこうと思う。

 

  • ・戦時中に小学生だった先生はお話が大好きで、いろんなお話を聞いたり話したりしていた。頭に「戦争がなかった頃にね…」とつけるとなんでもアリだった。
  • どんな病気をわずらっているこどもが必ず言うのは「元気になって学校へいく」ということ。本来、学校を嫌いなこどもはそうそういない。
  • 駒沢公園はむかし、41万2300平米のただの野原だった。そこにぽつんとたっていた小さな無認可保育園で先生は16年間保母をしていた。
  • 保育はもうからないから、楽しまないと割にあわない。
  • こどもを育てる、ということはこどもの「想像力を育てる」ということ。
  • 保育園のこども達がいちばん喜んだ絵本が「ちびくろさんぼ」。これのおかげで常にみんな全員出席だった。
  • 「ちびくろさんぼごっこ」でこどもは一日遊んでいた。これには誰でも参加できた。ちびくろさんぼが5人、虎が10匹いても成立する。生まれは遅いけど体は大きいような子はやしの木役で、重宝される存在だった。
  • 物資のない時代だったからさんぼに出てくるようなホットケーキを食べたことのある子は少なかった。園長先生が材料をそろえてホットケーキを作ったところ「世にもすばらしいホットケーキをたべた!」とこども達は大興奮した。
  • その、舞い上がらんばかりに喜ぶこども達の顔をみて先生はホットケーキよりももっとおいしいもの…カステラを食べさせてあげよう!と思いついた。それがぐりとぐらの誕生のきっかけだった。
  • 2.3才の子でも品格がある。どの子でも「よい心」をもって生まれてくる。
  • こどもはお母さんが大好き。叱られたって何したってお母さんのことが好き。
    (ここで涙をハンカチで押さえていた人がちらほら)
  • 抱いて→おろして→ほっといて、となるのがこどもの基本。抱いて、と言われるのは幼児期だけだからその後、後悔しないようにたくさん抱いてあげて。
  • 携帯をみてるヒマがあったらこどもの顔をみてあげて。
  • ある4歳児は言った。「おおきくなったらおかあさんとけっこんする。そのあとはふたりでネコになる。」
  • 本はこころの避難所。良いものは欲しがるだけ与えてよい。

 

そしてついに「ぐりとぐらの歌」、作者本人はどういう節で歌っているかというお話になった。会場全体がぐっと前のめりになった瞬間、、、

 

ズバリ「あたしは普通に朗読しています」!!!

 

や~、これには正直おどろいた。面食らったね。
だってあそこだけ明らかに歌えよ、みたいな書き方だから…つい歌うもんかと思ってましたよ。でもそれって読み手次第なんですね。
ちなみに読者が思い思いに作曲した「ぐりとぐらの歌」なんと116編が収録されたCDまであるらしい。読者の妄想トレインが暴走した結果、116通りものぐりとぐらの歌が出来上がってCD化までしていたのだ!これってすごいことだと思う。
だって作者は普通に朗読しているというのに…いたってクールに。

 

何にせよ、すばらしい作品というのは読者の暴走を促すものなのだなあと感じ入った。そして中川季枝子さんご本人のお話は、含蓄とユーモアがあって楽しくいつまでも聞いていたいとさえ思うほど耳に心地よかった。
最後に今夜からは普通に朗読していいんだ、とちょっとホッとした私だった。