おそるべきこども

9才男子、突然泣く。

2017年9月11日

代表 平野聡子 / satoko hirano

こどもから学ぶ日々ブログ

9才男子、突然泣く。
 

暑い1日の終わりに、ヘトヘトの体を熱い銭湯のお湯に浸かって癒した、夕暮れ時。
むすこと肩をならべて、どうでもいいことを話しながら歩いていた帰り道のことだった。

 

「僕、ヘドロパパってゆるせない。(注・TVの「深イイ話」に出てくる2丁拳銃の小堀ののこと。週2しか家に帰らない、家の中でタバコを吸う、子供の誕生日を忘れる、などダメパパっぷりが惜しげなく披露されている)」

 

突然、むすこが言い出した。

 

「家の中で、タバコ吸うなんてぜったいダメ!石投げてやりたい。」
と、続けてバッシング。

 

(ははーん。これは、喫煙者のウチのパパに重ねてるんだな。)

 

と、思い

 

「家の中で吸うのはあかんよね。小さい子もいたし。」
わたしが当たり障りのない返答で、お茶を濁すと

 

「だめだ!ぜったいに!」

 

珍しくヒートアップして、TVの中の話にすごく怒っている様子。

 

「肺がんのリスクが高まる」

と何かで読んで知ったむすこは、パパにタバコを止めるよう、再三言ってきた。
が、なかなか聞き入れてはもらえず、どうやらそれも彼の怒りに拍車をかけているようだった。

 

「でもさ、うちのパパとヘドロパパはちがうよ。

今ちょうど禁煙セミナーに行って、辞めようとしてるところなんよ。
だから、今はあんまり止めろ止めろって、言わんといてね。

余計に意識しちゃうから。」

 

わたしがそう言うと、突然、むすこは堰を切ったように泣き出した。

 

「ぼくの…夢は…」

 

そこまで言って、しゃくりあげて喋れなくなってしまった。
次々とこみ上げてくる涙。

 

あんまり泣くので
「ちょ、ちょ、ちょ、どうしたー?」

 

とわたしも笑いながら、ワケもわからないまま、もらい泣きしてしまった。

暗い夜道で人目をはばからなくてもよいのをいいことに、わたしもむすこもワンワン泣いた。
肩を震わせて泣きじゃくるむすこと、笑いながら泣く母親。
立ち止まって気を許したら、もっと泣いてしまう気がして、歩みだけは止めずにやたらと早足で。

すれ違った人は、どんなワケあり親子?とさぞかし奇妙に思っただろう。

 

しばらくして、お茶を飲ませて落ち着いてから

(同時に自分も無理やり涙を引っ込ませて)

 

「夢は、何?何て言おうとした?」

 

と聞いてみたけれど

 

「しらない。わすれちゃった。」

 

と、照れてしまい

その話の続きは、何度聞いても、教えてもらえないままだった。

 

 

それから数日経ったある日のこと。
習い事の体操の参観時間に「七夕の願いごと」を発表する時間があった、らしい。

「らしい」と言うのは、私は仕事で行けず、あとからママ友に聞いて知ったからだ。

 

ママ友「息子くんの願いごと、なんだったと思う?」

 

私「えー、なんだろ?任天堂スイッチほしいとかかなー?(ヘラヘラ)」

 

ママ友「なんと『家族の健康』だったよ。」

 

私「…へー、そっか。じいさんみたいだね(笑)」

 

笑いながら、笑ってるフリをしながら、また心で泣いた。
今年に入って、立て続けに2人の祖父に癌が見つかり、その知らせをきくたびに、悲しそうな顔をしていたむすこ。

 

そうか。
あの時、泣いて言えなかった願いは、これだったのか、と。

 

〈後日談〉
それから2ヶ月、パパは禁煙記録絶賛更新中です。

 

 

 

#おそるべきこども
#禁煙

失ってから大切さに気がつくものの代表。愛。そして健康。