妊娠・出産・育児日記

あの子のこと(夏の怪談風)

2010年8月30日:代表ブログ(2007年10月〜2010年10月)掲載からの転用

代表 平野聡子 / satoko hirano

初の妊娠、出産、育児。約4年間の記録。

毎日暑いけど、日がすこしでも翳ってきたらすぐに公園へ行くことにしている。

友達いわく「子供は日に当てるか水につけて弱らせないと(笑)夜、ぜんぜん寝ないよ…」まさにその通り!
自分の電池をとことん使い切るまで遊ぶ、2才男児の体力を奪うには母がインドア派であろうとなんだろうと、外遊びしかないのだ。

 

近所に公園はいくつかあって、その日の気分で選ぶ。
特に暑い日は足をのばしてジャブジャブ池のあるところ、そうでもない日は他のアトラクションがあるところへ、レンとふたりで出かける。
少子化といえども夏休み中の公園は親子であふれかえっており、何度同じ公園へ行っても同じ顔に会えることはあまりない。
なので、そのときどきで居合わせた子と一緒に遊んだりする。
最近知らない子にも「いっしょにあそぼ」と言えるようになったレンは意外に社交性を発揮して(といってもお互いの真似っこしたり、追いかけたり、ただニコニコしあったりするだけ)けっこう楽しそうである。

 

しかもそうやって子供同士で遊んでくれると母はたいそうラクである。
「これぞ一石二鳥、良きことじゃ」
殿様みたいな感想を胸に抱き、目をほそめる母である。

 

そんななか、ちょっと気になることがある。
たいていは一緒に遊んでる子のおかあさんが側にいて、目が合うと挨拶したり世間話をしたりするのだが、見渡してもその子のおかあさんらしき人物が見当たらないことがある。
よ~ く目をこらしてみるとずいぶんと離れたところにあるベンチでひとり、携帯画面を凝視している女性がいて、こどもが時折そちらの方向を振り返って姿を確認し てたりすると〈ははあ、あの人がこの子のおかあさんなのだな〉と分かるからまぁまだ良い(かなり問題はあるけどいるだけマシ)。
どんなに見渡しても、その子の保護者らしき人が見当たらないことが稀にある。
いくらなんでも3才位の子が、兄姉もなしにひとりで公園に遊びに来ることはあまり考えられない。どの公園もすぐ脇には大きな道路が走っていて危ないのだ。

 

そういう子には特徴がある。
1.とても人懐っこい。2.よくしゃべる。3.甘えてくる(私のことを「お母さん」と呼んだりタオルで顔をふいてもらいたがったりする)。

 

いろいろ話しかけてくるので「ママはどこ?」と聞こうと思っているうちに、フッといなくなってしまう。バイバイも言わずに。
いやべつに煙のように消えるわけじゃないんだけど、じっとしていないレンに気をとられているうちにその子を見失ってしまう、と言ったほうがいいか。
気が付くとさっきまで楽しそうにレンと遊んでいたはずの子の姿がみえないのだ。

 

冷静になって考えたら、わたしの死角にその子のおかあさんはいたかもしれない。遠くでお喋りに夢中になっている、おかあさん達の中のひとりがそうだったのかもしれない。公園に隣接してるお家の子で、とつぜん帰りたくなったのかもしれない。
でもそういう子達に会った後にふと、ありえないことが頭をよぎるのだ。

 

「あの子は、ほんとうに実在したのかな」

 

端からみたら遊んでいるのはわたしとレンだけで、もしかすると「あの子」の姿は他の人には見えてなかったんじゃないか?
ローテーションで複数の公園に行くせいか、二度と同じ子には会えなかったりするから余計に気になる。気弱そうな笑顔をあたまの中で何度も再生してしまう。

 

実在しててもしてなくても、1人で遊びにくる小さい子のことが気になるこの頃。