輪切りのわたし

めちゃ動くようになった！と思ったとたんまたベッドから落ちてしまった・・・。
ベッドの片側は壁についているし、もう片側には布団をしいてガードしてあったのに今度は足元のほうまでズリズリと這って行きどうやら頭から落っこちてしまったのだ。朝方、足の方から「ウワーン！」と泣き声が聞こえて飛び起きた。
こらー！なんかいおとしたらきがすむんや！
ええかげんぼく、あほになってまうで！
泣き声が、わたしにはそう聞こえた。
 
いつも通り、すぐ泣き止んで機嫌もいいけれどたんこぶが出来ておでこが腫れていたので、念のため病院へ連れて行った。
総合病院に連れていくのは初めてで緊張した。
朝からすごく混んでいて、当たり前だけど赤ちゃんからおばあちゃんまであらゆる年齢のいろんな病気の人がいてドギマギしてしまった。
その中にいたらレンはどう見ても元気はつらつだったけど「必要ないとは思いますけど・・ご両親の気がすむなら」ということだったので頭のレントゲンとCTスキャンをとってもらった。CTスキャンとは輪切りのことだ。
脳の輪切り！わたしだってしたことない！
 
結果が出て、部屋に呼ばれレントゲンとCT（脳の輪切り）写真を見ながらお医者さんに説明してもらった。まるでドラマのワンシーンのようだった。
とりあえず説明が始まる前にあらゆる想像（悪い方）をしてみた。
 
「転落の際に骨が・・・」とか
「転落の跡はないのですが実は先天性の・・・」とか
「脳波が気になりますので再検査・・・」とか
「頭の中にマイクロチップが・・・」とか
「地球にはない高純度のマグネシウム金属が・・・」とか
 
とにかくいろいろ（SFの可能性まで）考えたけれど
 
「何も問題ないですね」
という先生のひとことで妄想タイムは終了した。
とりあえず大丈夫！ということが分かったとたんわたしはレントゲン写真の、シャレコウベの口の部分がとても気になった。
というのもレンの歯はまだ一本も生えていないのに、写真上では小さな歯が上にも下にもズラリと生えているのだ。
「これは？まだ歯は生えてないんですけど・・・」
と聞くと、先生はすこし笑いながら
「歯の予備軍ですね」と言った。
 
まだ表面には出て来てないけど、こんなにたくさんの歯が顔を出すのを待っているんだ・・・！と思うと土の中で春に芽を出すのを待っているちいさな種のようで、頼もしかった。
 
問題ないと分かると、全然関係ないところが気になるのはウンポコさんも同じみたいで
「このレントゲン写真ってもらえるんですか？」
「かっこいいから欲しい」
などと天真爛漫に言っていた。根っからのデザイナー（？）だと思った。