大家さんがほぼ毎週、ガレージで開催しているBBQパーティにお呼ばれする。
10キロほどの肉の塊を分厚くスライスして豪快にじゅうじゅうと炭火で焼くのだ。お昼間は雨だったけど夕方から晴れていい気持ち!
住人のみんながサラダやパン、ビールなんかを持ち寄って一気にテーブルの上が賑やかになった。
レンも家から持って来たベビーチェアに座ってゴキゲン!
最初はキョロキョロしていたけれどすぐに慣れた様子。
外国人も日本人も混ざって一緒に外でごはんを食べる。というのはレンにとって初めてだったから、きっと外国に来たみたいにエキサイティングだったと思う。
まさか家から徒歩5秒の場所だとは思わないだろうな。
3歳ぐらいまでは騙せるかしら?
庭でワイワイお酒を飲んで騒いでいると大家さんのお母さんが帰って来た。
大家さんのお母さんは真っ白の髪に上品なパーマをかけ、80歳になるけどとても元気でしっかりしている人だ。同じマンションに住んで、管理人みたいなこともしてくれている。
そんなお母さんの姿が門扉のところに見えた瞬間
「あ、お母さんが帰ってきましたよ」
「お母さんです」
「大家さん、お母さんが。」
と皆、口々に言った。
おお!この感じ、なんか知ってる・・・とわたしは思った。
小・中学生くらいの時、鍵っ子の友達の家に遊びに行って子供達だけでおやつを食べたり冷蔵庫を開けたり鏡台の引き出しを覗いたり好き勝手しているところに、外出していたその家のお母さん(家の主)がとつぜん帰ってくる。
「ハイッこどもの時間、終了!」みたいな空気が一瞬でピリッとする感じ。
特に悪い事は何もしていないのに背筋がひゃっと伸びる感じ。
そこに集まっているのはいい歳をした大人ばかり(実際大家さんだって60近いし)なのに、「おかあさん」の登場により国籍問わずみんなどぎまぎしているのがおもしろかった。
酔っぱらった大家さんが
「どうしたんだみんな。かあさん、お帰り!!」
と大声で叫んだから静寂は破られたけれど、当の大家さんだってほんの一瞬どきり。と
こどもの顔に戻ったのをわたしは見逃さなかった。