レンの走るスピードが着実に早くなっている。
最近まで「てけっ・てけっ・てけっ」という感じだったのにいまや「テケテケテケテケテケテ!」という感じ(SEつけるなら)になっている。
昨日も区役所で一瞬、ほんの2.3秒ほど目を離した隙に閉まりかけのエレベーターにすべりこんで、ひとりで乗って降りて行ってしまった。
「あれ!今、赤ちゃんひとりで乗って行ったわよ!?」
「大丈夫??」と周囲がざわざわするなか、焦ったわたしはすかさず隣のエレベーターに乗り込んで、ミッションインポッシブル風に下に降りる。
ひとりで外に飛び出したところに車が来たらどうしよう??
ああ、どうか何もありませんようにーー!!
と祈りながら階下に急ぐとサラリーマン金太郎みたいなスーツの男性にレンが捕獲されていた。
がっしりと腕をつかまれていて動けず呆然としているレン。我が子ながら珍獣捕われる!って感じで思わず笑ってしまいそうになる。
「ああ、すいません!その子、うちのですー」と駆け寄ると
「よかったー!!なんかおかしいと思ったんですよね!!扉が開いたらひとりだったから!ニコニコして降りてきたから!あれ?これはおかしいぞ、と!」
と全て語尾に「!」がつくほど勢いのあるお返事が返ってきた。エレベーターの扉がじゃーん!とご対面番組風に開いて(ⓒかきいろ)仁王立ちで立っていたであろうレンを思い描きながら丁寧にお礼を言って頭を下げると
「うちにも子供がいるから分かるんですよ!いやあホントによかった!」
と言って熱血サラリーマン金太郎は笑いながら行ってしまった。
さ、さわやかだ・・・。
この思い出に水彩で色をつけたいくらいさわやかだ。
もちろんこんなラッキーなことばかりでもない。
ベビーカーで移動っていうのは思った以上に場所をとるものなので基本的にAボタンとBボタン(A=ありがとうございます/B=すいません)連打のわたしである。
それでも狭い通路を通ろうとしてる時に、前からおばはんがやってきたので
道を譲って止まっていたら肩にバン!と激しくぶつかってベビーカーもろともよろめくわたしを睨みつけて行ってしまったり満員電車で(乗るわたしも悪いが)舌打ちされたりすることもある。
そういう時はなんか、もう立ち直れない・・・ってくらいがくっと凹む。くっ!強くなりたい・・・!アジャコングのように。と思う。
こういう立場になるまでわからなかったこと。
だけど元気を取り戻させてくれるのもまた、サラリーマン金太郎みたいなひとの優しさだったりするのだ。