妊娠・出産・育児日記

baby rattle bab bab もうひとつの話。

2010年4月21日:代表ブログ(2007年10月〜2010年10月)掲載からの転用

代表 平野聡子 / satoko hirano

初の妊娠、出産、育児。約4年間の記録。

☆長文&熱い文章なのでヤケド注意☆

 

baby rattle bab babをリリースしてから約1年が経ちました。
それを記念して、今日は誰にも言っていないbaby rattle bab bab秘話を書こうと思う。

 

アイデアを思いついたのは、里帰り中に忘れ物の多いママ友を見て「携帯電話に赤ちゃんをあやす機能がついていたらおかあさんの荷物がひとつ減らせる」と思ったことが、きっかけだ。
ただ「これを作らなければ」と強く背中を押される出来事があった。

 

出産後、里帰り先から東京に戻り都会暮らし始めてしばらく経った頃。
わたしは何か、言葉にできないような漠然とした不安を感じていた。
便利な都会に住んでいて、人だって沢山いるはずなのにこの世界でこどもとたった2人きりのような、今まで感じたことのないような孤独な気持ち。
住んでる地域の待機児童は4000人とも5000人とも云われおり、さっぱり入れる気がしない先行きの見えなさや、頼れる両親から遠く離れていることや、合ってるのか合ってないのかもよくわからん慣れない育児の大変さ…
普段は育児でテンパッていて忘れていても、ふと気が付くと頭の中では常に不安のシンフォニーが低音で鳴り響いていた。
友達がバリバリ仕事をして出世していくなか、自分は仕事から離れ社会からも置いていかれるんじゃないか、という焦燥感も追い打ちをかけた。

 

こどもとの日々は穏やかで充実しているし、オットだって協力的、同じ境遇の友達もいるはずなのに、なんでこんな気持ちになるんだろう?
自分のことながら自分の抱えている感情をうまく整理できなかった。

 

ある日、オットの会社の会計士さんとの打ち合わせの為、たまたま子連れで入ったカフェでこどもがグズり出し、あやしている最中にそこの店主に
「うるさい!」と大声で怒鳴られた。
お客さんの少ない時間帯だったけれど途端に店中がしんとなり、わたしのこどもが泣く声だけが響いた。
一瞬、何が起こったのかわからないくらいに動揺した。
びっくりして謝って逃げるようにお店を出た帰り路。
日が暮れかけた246沿いを、ベビーカーを押しながら歩いていると涙がでてきた。
ダメ母!と言われた気がした。
お前は泣いている子供もどうにもできないハハオヤだ!と。

 

今だったら、それは考え過ぎって言える。
お店での、もうちょっと要領のいい振る舞い方も分かる。
でも当時のわたしは「余裕」という言葉から1千光年ほど離れた場所におり、誰かがかる~くつき飛ばせば簡単に崩れ落ちてしまう状態だったのだ。

 

家に帰ってからもやるせなくて、この話をその頃よく出入りしていた同じ月齢の子供を持つママが集う会員制ネット掲示板にはじめてカキコミをしてみた。
お店の名前は伏せ、こういう事があって悲しくなった。自分はダメ母かも…というような自嘲的な内容だったと思う。
すると瞬時にレスが20件以上ついた。大袈裟な話じゃなくて、1分、2分、とリロードする度にどんどんコメントがのびて行った。
「頑張れ!」「1人じゃない」「同じ経験したよ」「ダメ母じゃない!!」・・・

 

全国の同じ月齢のこどもを持つママ達が一斉に励ましてくれたのだ。
わたしは目の前にはいないけど、画面の向こうにいる人達の体温をその時確かに感じた。

 

その出来事のほんの5日前、2008年7月11日に日本でiPhoneが発売されたというニュースで日本は湧いていた。
それからさらに9ヶ月後の2009年の春に、オットや友人の絶大なる協力に恵まれてbaby rattle bab babが産声をあげた。
わたしは何としてでも、外出先などで赤ちゃんがぐずって泣いた時にすぐにあやせるオモチャが作りたかった。
そしてそれは携帯電話に付いてなくてはならなかった。
なぜなら、常に持ち歩いているものだから。
お気に入りのおもちゃを忘れてしまったイザという時、頼りになるもの。
おかあさんの心理的負担をすこしだけ、軽くできるもの。

 

今、こどもは2歳半になった。
もう外出先でぐずって泣いたりすることは殆どない。
わたしもずいぶん余裕が出てきて、育児をしながら少しずつでもやりたい事を表現できるようになってきた。
baby rattle bab babはありがたい事に世界中の数十万人の赤ちゃんに使ってもらい、米国のテレビや新聞で紹介されるまでになった。

 

それでもあの時、夕暮れの246を泣きながらベビーカーを押して歩いていた自分には、そんな未来を1ミリも思い描けなかった。
先が見えなくて、テンパッてて、ただただ不安だった。
そしてあの頃の自分によく似たおかあさんは今、たぶん、数え切れないほどたくさんいる。
だから使ってほしいです。
困った時に思い出してほしいのです。

 

わたしがネット上のママ達に励まされたように、わたしはアプリを通してママ達を励まし続けたいと思っている。