夜、テレビを観ているわたしのところへ母がやってきて開口一番「イルミネーションすごいよ!行ってきなさいよ!」
と自転車の鍵を私の手に押しつけながら、まくしたてるので何かと思えばどうやら近所にもの凄い気合いの入ったクリスマス電飾を庭に施している家があるらしい。それをとにかく今すぐ(レンが眠っている間に)観に行ってこい、とTVなど呑気にみてる場合じゃないわよとばかりにいうのだ。
すでに自転車の鍵を手に握らされている。
はて?
今まで話題にのぼったこともないし「イルミネーションが好きだ」と言ったこともないのにこの勧められようは何だろう、と思いながら「わたし去年観て感動したのよ~!一見の価値アリよ!ホントよ!!」と背中を押されワケもわからず寒空の下、出かけることにする。
わたしはこういう「変な勢い」に弱いのだった。
ひとりディズニーランド
目的地は長い坂道をのぼりきったところにある。小高い山や大きな公園の脇を走るその一本道は、木立が鬱蒼としていて夜9時にもなると人気もまったく無く、ひたすら暗い。
道一面に敷き詰められている濡れた落ち葉をペダル踏むたびカサカサいわせながら気がつけば息せき切ってひとり、坂道をのぼっている。
あ~もうダメだ!しんどい!ていうか自転車乗るのめちゃくちゃ久々だよ!
と白い息を吐き出した時ようやっと目の前の道が開けて・・・あ!
嘘みたいによく出来た感じで突然、坂の上にピカピカ燦然と輝く一軒家が現れた。すごい。異様だ。ひとりディズニーランドだ。
大会なんかもあるそうだから「過剰なイルミネーションの家」というのは季節柄珍しくはないんだろうけど(なんと言ってもニュータウンだし)この暗い山道を抜けたところに突然、ドッカーン!と異世界への入り口のようなギラギラの電飾ハウスが現れるというシチュエーションは、ずるい。わたしがこどもだったら「我、お菓子のお家発見なり!!」と叫んで勇敢にチャイムを鳴らしてしまったことだろう。
「このチョコレートの扉、食べてもいいかしら?」