ミルクジャポンブログ記事

キューティー&ボクサー、完璧なふたり。

2013年12月28日:ミルクジャポンブログ(2012年4月〜2016年9月)掲載からの転用

代表 平野聡子 / satoko hirano

ミルクジャポンブログに約4年間の連載。テーマはお出かけ。

cutie-sub1-660.jpg先日、

 

キューティー&ボクサーを観てきました。

オットに2児を託して、、、

映画が好きなので、なるべく映画館で観たいのですが、小さい子がいるとなかなかそれも叶いません。

ママズクラブシアターとか、子ども向けの映画を一緒に観るとか、いろいろ試してきたけれど。

上映中に、やれ暗いのが怖いだの、やれ飲み物こぼしただの、やれ「さっきの何?どういう意味?」だの、やれオシッコだの…

 

全然、集中できん!

 

というわけでね。最近、妻の機嫌が悪いな〜と感じている全オットのみなさん。

ママに是非、ひとり映画の時間をプレゼントしてあげてください。

ほんの2時間程度の子守りでいいんです。

帰ってきたママの表情が確実に、穏やかに優しくなること、わたくしが保証します!!

 

ひさびさに映画館の暗闇にひとりになると、妻とか母親とか仕事の顔とか、いろんな役割の顔がどんどんはがれ落ちて「素」の自分になっていくのを感じます。

ああ、この感じひさしぶり〜、とシートに身を任せて映画だけに集中できる自由を満喫♡

そうすると、剥き出しの心にガンガンはいってくるのです。映画が。

自分こんなスポンジだっけ?ってくらい10代顔負けの吸収率バツグンなネイキッドハート状態で観る映画は、なんとも格別です。

 

根底にはいつも「愛」が溢れている

キューティー&ボクサーは、81才の現代芸術家・篠原有司男とその妻、乃り子の波乱に満ちた結婚生活を4年に渡り追いかけたドキュメンタリー。

 

見所はいっぱいあるんだけど、いちばん注目したいのは乃り子さんという女性です。

NYで恋に落ちて子どもを身ごもり、生活に追われて自らのアート活動もままならない日々…

その間、夫である篠原有司男はアル中で、お金もないのに酒浸り+好き放題。

わたしならブチ切れて「実家に帰らせていただきます!」とサッサと帰国しちゃいそう。

 

だけど、乃り子さんは(きっと数えきれないほど喧嘩も葛藤もあっただろうけど)決して音を上げない。

それどころか、夫のアシスタントをしながら息子アレックスを育て上げ、子育てが一段落したところでまたアート活動を本格的に再開。さらには59才で夫と共に夫婦の「ニ人展」を開催してしまうという逞しさ…!

 

そして何より、乃り子さんはいつでもオシャレでとても綺麗なのだ。

こんな苦労したら、恨みつらみでわたしなどは夜中に包丁研ぐ系の鬼婆化してしまいそうだけど(笑)、美しい銀髪をおさげにした、その横顔は時に「少女」と呼びたくなるほどに可憐。

ボーダーや花柄、ハードなレザーまでさらっと着こなし、飄々としている。

頭の回転が早く、口が達者で、篠原氏が何か言いたげでも「あなたが頼りないからよ」とぴしゃりと言って黙らせる。

 

けれど、根底にはいつも「愛」が溢れている。

何があっても揺るがない、2人のその純粋さに心が打たれます。

Cutie loves Bully very much. “と最後に言ってのける乃り子さん。

こんな女性がいるんだなあ、何ていう名前の女神様ですか…と感心してしまいました。
また、息子であるアレックスの幼少時の映像もちらっと出てくるんですがこの子が、すごくおとなしそうでいつも微笑んでいる繊細そうな男の子。

おまけに、ちょっぴり太めなボーイ。

ここで、わたしは雷に打たれたみたいにガーン!となってしまった。

 

アレックスとむすこを重ねて

「この子、うちの息子に雰囲気がそっくりだわ…!」

ワナワナ…ばっしゃーん!(手が震えて、持っていたポップコーンを床にぶちまける音)

 

そこからは、勝手に猛然と感情移入しまくりです。

わたし達は芸術家とはほど遠いですが、夫婦で仕事をしていたりするので、身に覚えのあるシーンが幾つか出てくる。

夢中で話しながら早足に歩いていく両親の後ろ姿を、追いかけるようにひとりで歩くアレックス。

大人のお酒の席に、ひとり混じっているアレックス。

酔っぱらった父親を横目に、ひとりで寂しげにお風呂にはいるアレックス。(そんな経験、さすがにないけどさ)

うう・・・アレックス・・・

 

泣いた。いや〜、泣きました。

隣の席の人が「え・・?ここそんな泣くシーンじゃないんじゃ…?」

ってギョッとした顔でのぞきこんでくるほどに泣いてしまいましたよ。

なにしろ、こちとら心がネイキッドなわけで、、、(照)

 

ラストシーンである、夫婦のボクシングシーン(冒頭の画像)がまた染みます。

ここは唯一、演出されたシーンらしいのですが、おそらくドキュメンタリー史上一番美しいラストシーンなのではないでしょうか。

そのくらい見事です。

きっと監督はこのシーンを撮りたいがために、この映画を撮ったんじゃないかと思うほどに。

 

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