ミルクジャポンブログ記事

FAIFAI×こども(後編)

2012年12月11日:ミルクジャポンブログ(2012年4月〜2016年9月)掲載からの転用

代表 平野聡子 / satoko hirano

ミルクジャポンブログに約4年間の連載。テーマはお出かけ。

前編はコチラ

舞台は、小学生のせつない夏休みの一幕を中心に、歌あり、夢あり、カメハメ波あり、カレーパーティあり、女子校生のマジダンスあり、ロボの合体あり…と(こんな端折り方でほんとスイマセン)

盛りだくさんだけど、決して子どもだましではないクオリティで、大人もグッとひきこまれる内容だった。

 

印象的だったのは要所要所で、これでもか!という程にこどもが沢山出て来て

みんながみんな本当に、目をキラキラさせて楽しそうだったこと。

 

そのせいでシーンのひとつひとつが、すごくリアルに感じられ、まだ「お芝居」と「現実」の区別がじゅうぶんについていないむすこなどは、こどもらが輪になっておもちゃで遊ぶシーンで、舞台に上がって一緒に遊びそうになったり、カレーパーティのシーンで、本気でカレーが食べられると思ったのか、誰よりも大きな声で「いただきます!」と言ってみたりと、ものすごい興奮っぷり。

立ったり座ったり、喜んだり怖がったり、こちらが嫉妬するほどのエンジョイっぷり。

 

 

2つの感情

特に、待ちに待った紙ひこうきを観客全員で飛ばすシーン。

最前列に座っていたので、後をみると200個ほどの紙ひこうきが、一斉にわー!っと飛んで来た、はずだった。

が、わたしは、振り返ってその圧巻な光景を見ることができなかった。

なぜなら、先に振り返ったむすこがこんな顔をしていたから。

 

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「あー、ひとってうれしいのと驚いたのと、同時だとこんな顔になるんだ〜。」

と、思わず目が離せなくなってしまった。

むすこにとっても、かなり刺激的な時間となったようだ。

 

舞台上には、本物の大人も子どもも、大人みたいな子どもも、子どもみたいな大人もたくさん出て来るせいか、観ているこちら側も「こども目線」だったり「親目線」だったり、目線がくるくる変わるのも、おもしろい体験だった。

こども同士の体温の高いかんじ、新陳代謝の匂いなんかを思い出したと思ったら

その後すぐに、親の気持ちで泣きそうになって、みている自分がいる。

 

ひとつ、本編とはそれほど関係ないのだけれど、ウッときたシーンが「お迎えの時の、こども同士の空気が変わる瞬間」だ。

お迎え時のこどもの胸中は、2つの感情がないまぜだ。

「おかあさんが迎えにきてくれて、うれしい」という気持ちと

「でも、まだ遊びたい!」という気持ち。

個人差はあるけれど、お母さんのお迎えが早い子は

「お迎えうれしい」10%、「まだ遊びたい」90%ぐらい。

まだ遊び足りないような、名残惜しさをのこしつつ

親に手をひかれて家へ帰っていく。

 

ところが、お迎えラッシュが続いて、こどもの数が1人、また1人と減っていくと

こどもたちの空気がじんわりと、しかし明らかに変わっていく。

「うれしい」50%「まだ遊びたい」50%。・・・ここがちょうどピーク。

間もなく、お迎えがまだ来ない子たちが、ちょっとそわそわし始める。

遊びながらも玄関の方をちらっと見たり、不安げに時計を見たり。

「まだ、おかあさん、こないのかな?」

口には出さないけど、顔にはっきりそう書いてある。

もう極太のゴシック体で書いてある。

 

そしてついに逆転。「うれしい」90%、「まだ遊びたい」10%。

やっと、待ちに待ったお迎えが来た子は

お母さんに飛びつくみたいにして、お家へ帰っていく。

でも、まだお迎えが来ない子がいる。ついに1人になってしまった。

ここは、もうたぶん「うれしい」100%、「まだ遊びたい」0%に

限りなく近かったりするんじゃないかな。

 

ああ・・・

ここまで観ていて、わたしは胸がぎゅぎゅうっとしめつけられる想いだった。

目の前に、お迎えに行くまでの、わたしが知らない時間そのものが流れていた。

ー仕事が長引いた

ー友人と立ち話をした

ーお買い物のレジに並んでいた

理由はいろいろあるけれど、ちょっとぐらい…いいか、とお迎えが遅くなってしまうことがわたしにはよくある。

そんな時、決まってむすこは扉まで駆け寄ってきて
「まま、おそかった。さがしてたのに。」

と、ちょっと恨めしそうに言うのだ。

わたしは、そんなこどもの心の動きなんかまったく知らないで、平気で遅れていたこれまでを、心の中で悔やんだ。

不意に、あ、やばい泣く。と思った。

でも無理矢理、涙をひっこめた。(むすこが隣で立ったり座ったりしてるから)

 

 

舞台は終盤へ

この舞台は、人それぞれ、グッとくるシーンや思わずリコメンドしてしまう子が

きっと全然違うんだろうな〜、と思う。もしかしたら、出てるこどもも「好きなシーン」とか「おもしろいと思ってるポイント」が全然ちがうのかもしれない。

それぞれが、それぞれのモチベーションでこの舞台を楽しんでいる。

なんだか矢鱈と、無防備な心の柔らかい場所にささってくるのも、きっとそのせいだ。

さらに、蓮沼執太さんの音楽が追い打ちをかけてきて、夏の終わりの夕焼けを見てるみたいな切ないけど大団円な気持ち、多幸感でもって終演。

 

終わったあとも、贅沢にも蓮沼執太さんと、親子のバンドのコンサートがあったりして、お得感満載だった。

しかもこの公演、ななんと!無料だったんですよ、奥さん!

しかし協賛金は随時受付中だそうですよ。

ご興味ある方はぜひ、一度チェックしてみてくださいね。

 

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左から、友人オッ子・演出の篠田千明ちゃん(オッ子とはもともとタイつながり)、わたし、むすこ。この数時間後わたしは、居酒屋さくら水産で、篠田さんとわたしらと隣の席にいた知らない中国人のおばさんという異色のメンツでテーブルを囲むことになる。そして舞台のことを話してたらなんかの拍子にうぉんうぉん泣いてしまう(舞台の間中ずっと泣くのを我慢していたから…)という訳のわからんことになるのだが、この時はまだ知らない。。。